2011-01-01から1年間の記事一覧
僕が研修医の頃には、認知症(アルツハイマー型痴呆)患者の寿命は5,6年と教えられたものだ。でもそれは多分医療を積極的にはしない場合であって、実際に入院している認知症患者はもう少し長生きで、でも、大抵10年位すると衰弱し、食事を取らなくなって死…
精神科では当の本人と治療契約が結びにくい。本人との会話自体が成り立たない事も多いからだ。で、治療方針など、どうしても家族と相談することが多くなるが、その家族の判断はかなり怪しい。介護者として保護者として患者に振り回され続けているから無理も…
自分は何回も死んで・何回も生き返っている不死身の男だ、という妄想をもっている長期入院中だった患者さんで、10年前から不整脈で心臓にペースメーカーを入れていた76歳の人が最近亡くなった。4年前に盗食したパンを喉に詰まらせた時に一時呼吸が止まったの…
先日内科から移ってきた75歳の認知症患者は、走るように徘徊し、他患者にぶつかっては倒れそうになり、危なくて見てられないので、皆で相談し、危ない時は車椅子に座ってもらってベルトで抑制することにしました。それはいいんだけど、この抑制が果たして精…
本人が入院希望の場合は、本人が自分の主治医にその旨を言えば、適切な施設を紹介してもらえるでしょう。本人は入院を希望しないが家族は入院を希望する場合も、やはり先ず本人の主治医に相談するのが順当でしょうが、本人の主治医は大抵の場合本人の意向を…
僕は電話が怖い。突然(当たり前だけど)電話がルルルル、と鳴りだすと僕の心臓もバクバクする。従って携帯も持ってない。事の起こりは研修医の頃、バイト先の病院での当直で睡眠中の午前2時に、看護婦さんの「先生、患者の心臓が止まってます」との電話で起…
入院患者が暴れたり、外来患者が警察に保護されたりして、関係者からの種々のクレームに対応している時などに、「精神科医って辛そうですね」とか、「大変ですね」、とか同情されることがある。他の科をしたことがないので比較のしようはないのですが、臨床…
認知症になった夫の父母の面倒を妻が一人で背負う苦痛を昔は介護地獄と言っていました。この地獄で妻は鬼と化した義父母に24時間ずっと苛まれることで、身体的な痛みを味わうだけでなく、精神的な苦痛や絶望感から妻はうつ病になるのでありますが、この「介…
最近、悔いの残る死亡が2例あった。最初は統合失調症60歳で、身寄りがなく単身生活をしていたが、2年前より通院しなくなり、迷惑行為等で近所で問題になり、保健所・警察より問い合わせが数回あった例。10年前に同様の問題が起こった時は保健所が連れて来て…
同じ県の大学病院からわざわざ僕の病院に送られてくる患者がいます。多くは、隔離や拘束が必要だけど大学では隔離や拘束が出来ないから、という理由です。例えば、精神遅滞者の肺炎の点滴治療とか、認知症患者の骨折での安静確保とかです。治療に必要なんだ…
ドイツの精神医学精神療法神経学会が、ナチス時代にドイツ精神医学の名のもとに強制的に断種され(去勢)、殺害された大勢の精神病患者に対し、正式に謝罪を表明したという記事と、その謝罪表明の内容が今年の精神神経学雑誌の8月号に載っていました。ナチス…
ニコンで働いていた派遣社員の上段勇士さんの自殺は会社に責任があるとして、勇士さんの母がニコンと派遣会社を相手に裁判を起こしていて、最高裁は会社の7千万円の賠償責任を認めた、というニュースがありました。勇士さんは昼夜2交代制勤務の過労でうつ病…
Mさんは、もう2年も、夜間だけにしろ保護室から出せない状態が続いているのです。Mさんは頚椎症も併発しているので歩行困難で、車いすを使っているのですが、「夜中に誰かに何かされる」という妄想があって、夜中に目覚めた時、車いすで動き回って、「何か…
厚生労働省は、認知症患者を最後まで地域で(つまり自宅で)看取る、という方針を変えようとはしないけど、実際には認知症で精神科に入院が必要となる人がかなりの数いることは間違いないのです(僕の以前のブログ:認知症老人のケアの場所、を参照して下さ…
入院したての患者さんの中には、薬を飲みたがらない人がいる。昔は上を向かせて、鼻摘まんで口を開けた所に水と薬を入れ、こんどは顎を閉じさせると嚥下反射が誘発されるので、それで薬を飲んで貰ったりしたが、最近はそういう手荒な事はダメなようで、只管…
精神科の医者が診察すると、精神療法をしたことになり、保険で点数が付きます。精神科の技術料、という訳です。内科医などと、どこが違うか、というと、内科などの技術は、はっきり目に見えることが多いけど、精神科の場合は、目には見えない患者の心の中を…
認知症が進むにつれ暴力的になり、食事の介助すら難しくなっていた90歳の患者さんが肺炎を起こし、救急病院に入院したがそこで点滴を自己抜去するなどして強制退院となった人が当院に来院し、「ここしかないから何としても入院させてくれ、ここで断られたら…
高校の時の友人が心筋梗塞で急死して、葬式に行ってきました。彼とは確か数年前に1回会ったきりで、僕には身近な人の死を悲しむ悲しさはなく、昔ともだちだったんだけど、死んじゃったんだ、へえってくらいな感じ方しか出来なくて、自分でもびっくりしてしま…
僕の病院で、後輩の先生とある看護婦さんが近々結婚するそうな。彼に聞くと、所謂一目惚れ、ということ。彼の言うことは、「彼女の考えていることは目を見れば分かる」とか、「彼女の好みが頭にストレートに伝わってくる」とか、まるで僕の患者さんたちの妄…
最近、「そう言えば、この頃Nさん暴力振わないわね」と主任さんの発言がありました。長期入院中の統合失調症のNさんは40歳で、数年前までは3か月に1回位の暴力があり、スタッフを悩ませていました。主任さんは「中年になって人間に余裕が出てきたのかしら」…
帚木蓬生さんなどがテレビや新聞なんかで色々言うもんだから、ギャンブル依存・中毒を何とかしてくれ、と、外来にくる人が増えてきた。「テレビで見たんだけど」とか、「新聞で読んだんだけど」などと言ってきて、中には新聞記事を切り抜いて持ってくる人も…
病院で医療費を払えない(払わない)人がいる。事務から「何とかなりませんか」と医者にも話が回ってくるけど、実際そんなこと僕に言われたって、僕にはどうしようもない。でも、確かに、長期入院中の患者の未払いは病院にとって深刻である。生活保護を受け…
精神病(てんかんは別ですよ)の患者さんから、「運転して良いですか?」と聞かれると医者は返答に困ってしまう。僕はなるべくその話が出ないように努力しているくらいである。「良い」とは言えない。飲んでる薬の説明書には「飲んだら運転をさせないように…
僕の担当の入院患者の中には。連帯保証人のなり手がいないばっかりに退院出来ない人も多い。彼らは、院内では大人しく、生活も問題なく、スタッフに迷惑を掛けない素直な人であるので、「私が保証人になるからアパートに退院させてあげて下さい」と言うスタ…
最近入院になった65歳男性は、東京の人で、数年前から東京の生活保護を受けながら当県の某施設(所謂無認可老人ホーム)にいたのですが、ボケてきて、その施設でケア困難になって、当院を紹介されて来た人なのですが、保護者もいないし、親戚もいない天涯孤…
どうもです。ようやく、僕のうつ病は回復傾向です。今回は、初めは、何とか薬を増やさずに、と考えて、色んな本を読み、認知療法とか、ヨーガとか、体操とか、自己暗示とかを試してみたのですが、うまく行かず、仕事に影響するようになって、結局、同僚に頼…
いろいろあって、どうも、またうつ状態です。仕事もシンドイし、何やってもムナシイ気分です。教科書的には、こういう時は、何もしないでじーっとしているのが良いと言われていますね。だから、僕も暫くじーっとしていることにします。 僕のうつが回復したら…
先日、いわゆる、新型うつ病の人が相談に来ました。新型うつ病は、学会の正式の病名ではないのですが、実際に臨床の場面で、働きすぎで精神失調を来す人が独特の訴えで来院するケースが増えていることは、明白であります。彼らの特徴は、仕事のやりすぎが原…
暴力の治療を求めて精神科に相談にくる人が絶えない。家庭内暴力や虐待の暴力を精神病の症状と錯覚して、「治してくれ」とやってくる。一般科の救急でも、暴力を、わざわざ紹介してくる先生も多い。でも、暴力なんて、果たして医者が治せるものなのだろうか?…
今、認知行動療法が流行である。幻聴は「患者の頭の中でだけのもの」で、「聞こえるだけで他に何をされる訳ではない」。妄想は「邪推」や「深読み」。いずれも客観的な状況に照らし合わせて理性的に行動すれば、自己コントロールは可能であり、それを手取り…