家族へのインフォームドコンセント

 精神科では当の本人と治療契約が結びにくい。本人との会話自体が成り立たない事も多いからだ。で、治療方針など、どうしても家族と相談することが多くなるが、その家族の判断はかなり怪しい介護者として保護者として患者に振り回され続けているから無理もない。以前、長期入院中の統合失調症の患者が気胸になった時の事、常識的には患部にカテーテルを挿入し脱気するのだか、困ったことに家族が承知しない。僕は、「見殺しですか」と脅かしたけど、「もうこれ以上患者に付きあわされるのはゴメンだ」と家族も本気で抵抗する。しょうがないのでそのまま様子を見ようかと考えていたら、外科の先生が「僕がムンテラしてみましょう」と、その家族に電話して、「挿入しないなら家に連れ帰って下さい」と究極の2者択一の選択を家族に迫り、目出度く承諾を得て挿入することが出来た。流石外科の先生、と感嘆していたら、その後本人が、「この管のせいで息が苦しい」と騒ぎ出し、しょうがないから両手をベットに拘束したんだけど結局自己抜去してしまった。で、今度は患者が抵抗しはじめ、再挿入出来ず、すると今度は家族が、「これで患者が死んだら医療ミスで訴える」と言いだして、まあ死ななかったから事なきを得ましたが、僕は、それからは家族の意向を初めから最大限尊重する方向で対応するようになりました。その外科医は相変わらずの2者択一でやっているようですけどね。