認知症患者の胃瘻

 僕が研修医の頃には、認知症アルツハイマー型痴呆)患者の寿命は5,6年と教えられたものだ。でもそれは多分医療を積極的にはしない場合であって、実際に入院している認知症患者はもう少し長生きで、でも、大抵10年位すると衰弱し食事を取らなくなって死亡していった。直接の死因は肺炎が多いようだ。それが最近は胃瘻(臍の左上あたりから直接胃に管を通して栄養を取る)の出現で、認知症患者の寿命は延びる一方になってきている。でも認知症は進行するのでいづれ寝たきりになり、家族が会いに来ても話も出来なくなって、その内誰も会いに来なくなっても只管生き続けることになる。子供達の方が先に死んでしまい、御遺体を引き取りにくる身内を探すのに苦労した、なんていう話も聞こえてくるようになっている。胃瘻造って退院出来た人もいるけど、自宅で管理しきれずに病院に戻ってくる人が大半だ。管を抜かれないように患者を拘束せざるを得ない事も多く、そうなると患者の生活の質(QOL)は低下する。
 以上、僕の目から見ると胃瘻には良い事なんか全くないように見える。「人間口から食べれなくなったらそれが寿命だ」、というのが自然で人間的であるように思えるのであります。総じて御老人には医療は控えめが良いのではないでしょうか。でも外科の先生は造りたがるのですよね…