認知症ターミナル患者のケア

 僕の病棟で拘束が増えているのは、要介護の認知症高齢者のせいだ。スタッフが幾ら一生懸命「患者中心医療」を心がけても、拘束が増えるのは仕方ない。あちこちの病院から「拘束しないと治療にならない」人達が集まるんだから仕方ない。点滴抜かれたんじゃ医療にならないし、転んで骨折されたんじゃ治療する意味がなくなってしまう。で、点滴する為の拘束が次第に転倒予防の為になり、拘束が外せるのは既に寝たきりになってから、という事になる。寝たきり老人を歩かせるのは至難の業だし、患者にかなりの苦行を課することになる。この10年間、何とか拘束を外して退院出来た人は2割位。5割の人はそのままご臨終だ。「これは医療ではないのではないか」とこの頃は思うようになっている。拘束してまで治療をしても、患者の体力はじり貧で、健康な体は2度とは帰ってこない。医者も患者も家族も努力は全て報われないまま臨終を迎える事になる事が大半だ。WHOでも健康寿命と言いだしたように、自立出来てこその寿命だと思う。ヨーロッパでは、「食べれなくなれば寿命」が徹底しているらしい。日本は「取り敢えず点滴」が多すぎる。拘束して点滴ーそこからゾンビが生産されるのを、家族は知らない。でも、認知症ターミナルは地域じゃ診れないのは間違いない。尊厳死は保険外ですか。