精神科医は報われない?

 入院患者が暴れたり、外来患者が警察に保護されたりして、関係者からの種々のクレームに対応している時などに、「精神科医って辛そうですね」とか、「大変ですね」、とか同情されることがある。他の科をしたことがないので比較のしようはないのですが、臨床医になるなら人間を相手にしよう、と思って選んだ精神科なので、肉屋さん(外科)や薬屋さん(内科)から同情されるのは心外な所もあるのですが、確かに人生50歳もすぎて、社会的な地位や名誉が多少とも気になるようになってくると、「報われない」といる思いが心をよぎることがあるのは事実です。一生懸命治療して上手くいったとしても、患者さんは具合の悪い時の事は忘れてしまうので、まず感謝はされないし、家族は患者に言えない不平不満をぶつけてくるし、会社は「完全に治癒しないと」と露骨に迷惑顔をしてくるし、上手くいかなかったらそれこそまるで病気の原因が精神科医であるかのように関係者皆でこちらを攻めてくる。強制入院だって、こっちは法律に基づいてしているだけなのに、弁護士や裁判官は「人権侵害だ」と騒ぎ立てるし、しかも実際に裁判になれば公務員でない場合は、誰も守ってはくれない。患者に診察中に殺される精神科医はニュースにはなっても、何となくそれもありか、と納得されちゃって終わりなのでありますね。
 患者はこちらに言いたい事をボカボカ言って、「ああ、すっきりした」、となるけれど、言われる方の身にもなって貰いたいものだ。精神科医だって生身の人間だから患者の言動で傷つくこともあるんだけど、でも、「それが仕事でしょ」と言われりゃそれでお終いだ。でも、
 僕の心はゴミ箱じゃないゾ!。