僕は電話恐怖症
僕は電話が怖い。突然(当たり前だけど)電話がルルルル、と鳴りだすと僕の心臓もバクバクする。従って携帯も持ってない。事の起こりは研修医の頃、バイト先の病院での当直で睡眠中の午前2時に、看護婦さんの「先生、患者の心臓が止まってます」との電話で起こされた。その時は習いたての心臓マッサージをして事なきを得たけど、その後1週間位、「心臓が…」の声が耳に響いて寝れなかったのでありました。次は10年位前の夕方、外来通院患者が「先生、お世話になったけど、これから死ぬことにしました」と電話してきた。その後僕がどうしたかはどうしても思い出せないけど、次の日の新聞に彼女の飛び降り自殺が報じられていた。で、さらに、その2年後、その日外来に来た患者が「実はこれから死んじゃおうかと思っているけど、どこにいるか教えてあげようか」と電話してきた。その時は何も言えないでいるうちに電話が切れてしまって、その後彼女の夫から行方不明の連絡が入り、1週間後に遺体で発見されたのでした。しばらく不眠が続いたのですが、次第に寝れるようになり、これらの事件も忘れていたのです。しかし、人生50年を過ぎ、心身にガタがくるようになって、心臓の動悸を意識するようになると、ある時その動悸が電話の鳴る音をイメージさせ、「心臓が…」「これから死…」「教えて…」という電話の声を3つ一遍に思い出してしまったのでありました。その後は電話の鳴る音を聞く度に、胸に重たい痛みのような感覚が走り、心臓がバクバクするのを抑えられなくなってしまったのであります。最近はかなり程度は軽くなりましたが、電話の鳴る音が心拍に共振するような、
何かしなきゃいけない事を忘れているような落ち着かない気分になるのであります。心電図で異常ないので、狭心症ではないと思いますがね、いやなものです。