「運転していいですか?」と聞かないで

 精神病(てんかんは別ですよ)の患者さんから、「運転して良いですか?」と聞かれると医者は返答に困ってしまう。僕はなるべくその話が出ないように努力しているくらいである。「良い」とは言えない。飲んでる薬の説明書には「飲んだら運転をさせないように」と書いてあるし、精神病の症状は皆その人の注意力を多少とも低下させてしまうことが多いから。でも、いちがいに、「ダメ」とも言えない。運転しないと生活に困る人が殆どであり、実際に運転して問題がない人が殆どであるから。
 現在、免許更新で、患者さんが通院中であると自己申告すると、その患者が運転する能力があるかどうかを問う書類が患者に渡されて、医者に判断が任されることになっている。その人が運転して良いか悪いかは、本来は、その人個人のその時の能力を実際に調べて見なければ分からないと思うけどネ、その書類にそう書く訳にも行かないし…となって、実際、非常に困るのであります。
「運転して良い」と書いて、その人が事故を起こした時に、許可した責任を問われるのもイヤだし(そういう裁判も有るらしい)、「ダメ」と書いて、患者の免許が取り上げられ、それで仕事にも行けなくなっても責任は取れないし…
 一番良いのは、患者が自己申告せず、病気を自分のプライバシーとして、自己責任で運転してくれることですけど、それは余りに医者の都合ですかねェ。