転倒予防の拘束

 先日内科から移ってきた75歳の認知症患者は、走るように徘徊し、他患者にぶつかっては倒れそうになり、危なくて見てられないので、皆で相談し、危ない時は車椅子に座ってもらってベルトで抑制することにしました。それはいいんだけど、この抑制が果たして精神保健福祉法上の拘束に当たるかどうかが議論となりました。内科でも車椅子に拘束することはあったのですが、それは内科医師の口頭指示で、記録はその都度はしていなかったということでありました。精神科で拘束ということになると、拘束中の頻回の観察は当然としても、記録も頻回にする必要があり、この記録が結構手間がかかり大変なのです。看護師の数が少ない精神科で手間のかかる記録が必要となっているのは、話が逆の気もします。そういえば、外科系の病棟の手術後なども先生の口頭指示で抑制することもありますが、それも精神保健福祉法上の拘束には当たらないようで、記録は必要とされていないのであります。
 法律は精神科に歩行困難な老人が入ってくるとは想定してないのではないか、とも思うのですが、だからといって法律を無視する訳にもいかないので、車椅子に抑制する場合もベットに拘束する場合に準じて記録をしてもらうことにしましたが、そうなると看護師さんも慎重になってしまって、拘束をはずすのを躊躇するようになり、内科に居た時より抑制(拘束)時間が長くなる傾向になっていまいました。行動制限を最小にしよう、という法律の趣旨には反する結果になってしまった訳でありますが、医者のすることに法律が手を出すと、往々にして上手くいかないんですよね、やっぱり(で、損するのは患者さま)。