悔いの残る死亡

 最近、悔いの残る死亡が2例あった。最初は統合失調症60歳で、身寄りがなく単身生活をしていたが、2年前より通院しなくなり、迷惑行為等で近所で問題になり、保健所・警察より問い合わせが数回あった例。10年前に同様の問題が起こった時は保健所が連れて来て当院医師が通報し当院に措置入院させたんだけど、今回は保健所も警察も「管轄外」ということ、また、当院医師(今回は僕)は通報する資格がない、ということで、放置され続け、風呂場で死後数カ月で発見されたという。もう一例は躁鬱病54歳の身寄りのない単身生活者。3年前より通院しなくなり、去年大家よりうつの再発の相談があった例。7年前のうつの時は従兄が連れて来て当院医師が通報し当院に措置入院させたんだけど、今回はその従兄は非協力的で、大家が市役所や保健所警察に相談してみたけど埒が明かないということで、当院医師(僕)が県の精神保健課にお願いしたみたけれどどうしようもない、ということで、放置され続け、極度にやせた死体で発見されたという。
 十数年前なら、精神保健福祉法ざる法であった頃なら、この2人は死なずに済んだのに、と思う。事実2人とも前回症状悪化時は当院医師の裁量で措置入院となり治療が出来、回復して退院できているのだ。どうして今回、僕では措置入院させられなかったのだろう? 法律上では誰でも県に通報出来ることになっているはずなのに… 今回分かったことは、県は、警察官の通報しか受け付けない、ということであり、警察官は警察以外の人の意見は受け付けない、ということであり、先ず警察官が保護しないと措置入院の手続きは進まない、ということであった。
 非常に後味の悪い、悔いの残る死亡事件でありました。