恋は妄想?
僕の病院で、後輩の先生とある看護婦さんが近々結婚するそうな。彼に聞くと、所謂一目惚れ、ということ。彼の言うことは、「彼女の考えていることは目を見れば分かる」とか、「彼女の好みが頭にストレートに伝わってくる」とか、まるで僕の患者さんたちの妄想と同じなのですね。その後輩も精神科なので、「恋愛は妄想と同じ?」と聞くと、「現象的には同じ。でも、妄想は社会的に不利益になるけど、恋愛は利益になる」との答え。「妄想を持った人は、それを自分の利益になると信じているんじゃないか?」と聞き返すと、「恋愛は当事者やその周囲の人たちでの多数が利益になるが、妄想は本人だけの少数意見」と。成程ね。「行為の結果の責任を取る決意のあるのが恋愛で、行為の結果の責任を考えないのが妄想」とも言った。さすが精神科医だ。
実は僕の妻も元看護婦で、僕も結婚する時はそんなこと考えてたような気がする。で、結果利益になったか、責任が取れたか、と考えると、アンマリ自信はない。結婚し、家庭を作り、子供を育て、と確かに一生懸命やってきたけど、それで良かったのか、どうか。別な生き方があったのか、どうか。ゴキブリの♀のフェロモンに釣られたゴキブリの♂と、同じなのか、どうか。問題は、誰が評価するか、だ。患者さんを評価するのは、当然医者ですがね。僕の人生を評価する者は誰だ??と思わず深刻になってしまった今日この頃でありました。