Nさんの暴力が減りました

 最近、「そう言えば、この頃Nさん暴力振わないわね」と主任さんの発言がありました。長期入院中の統合失調症のNさんは40歳で、数年前までは3か月に1回位の暴力があり、スタッフを悩ませていました。主任さんは「中年になって人間に余裕が出てきたのかしら」と好意的な見方をされていたのです。僕はあえて反論はしなかったけど、彼は、実は病勢が進行しているに違いない、と僕は感じてたのでした。認知症で暴力的な人が病気が進行すると次第に大人しくなるように、統合失調症の患者さんの暴力も末期になると目立たなくなって行くことが多い。その後は人格が崩壊し、無為自閉となってゆくのです。Nさんは今までは暴力で退院出来なかったけど、これからは、自立困難で退院出来なくなるのかなぁ、いずれにしろ、退院出来ないのには変わりないにしろ…なんて考えてしまいました。Nさんの人間としての最後の抵抗が暴力だったと考えられないこともないではないかも知れないなあ、と思ってしまいました。
 統合失調症が「治せる病気」になったと言われ始めて久しいけど、どうして僕の患者達は悪化の一途を辿るのだろう。僕の予想が外れてくれ、と祈るような気持ちになっていますが、はてさて、どうなることやら…。