暴れん坊の老人の最後

 認知症が進むにつれ暴力的になり、食事の介助すら難しくなっていた90歳の患者さんが肺炎を起こし、救急病院に入院したがそこで点滴を自己抜去するなどして強制退院となった人が当院に来院し、「ここしかないから何としても入院させてくれ、ここで断られたら私(嫁)はこの人と心中するしかない」と、土下座せんばかりの勢い。確かに肺炎は重度であったので、家族に同情して入院させた。やはり暴れるので拘束して点滴をした。食事の介助の時は2人がかりで、一人が両手をおさえ、もう一人がスプーンでおかゆを口にもっていく、というようなことをした(当然家族には承諾を取ってある)。1か月位で回復したが、家族は「ホントに良くしてもらって助かってる。でも、もう少し置いといてくれ」ということだったので、退院が延びていた。3ヶ月目に徘徊中に転倒し、大腿骨骨折。手術後肺炎再発し、今度は治療に反応せず結局入院半年後に死亡してしまった。家族は、「お世話になりました、有難うございました」と遺体を引き取り、これで取り敢えず終わった、と、思っていたら、何と、全入院費が未納で、家族は「病院の過失で死亡したんだから、治療費は払わない」といっている、と。さらに数日後、カルテが差し押さえられた。患者虐待で家族が訴えた、ということであった。家族は「点滴するとき拘束したり、食事の時に両手をおさえられていて、可哀そうで見ていられなかった。退院させたいと言ったが退院させてくれなかった」と弁護士に話したそうである。院長に「何であんな患者入院させて」と怒られてしまった。その後何だか知らないけど訴えは取り下げられたけど、結局治療費は未納のまま。家族が可哀そうと思って入院させてあげたのに、バカヤロー!