某大学から送られてくる患者

 同じ県の大学病院からわざわざ僕の病院に送られてくる患者がいます。多くは、隔離や拘束が必要だけど大学では隔離や拘束が出来ないから、という理由です。例えば、精神遅滞者の肺炎の点滴治療とか、認知症患者の骨折での安静確保とかです。治療に必要なんだから、大学病院でも堂々と隔離や拘束をすれば良いのに、と思う。隔離は拘束を規制されているのは精神科の入院施設だけで、外科や内科では治療の為の隔離や拘束は(日本では)規制されていないハズであるのに、どうして自主規制までして、患者を排除するようなことをするのだろう。患者の側からすれば、どうせ隔離や拘束されるなら、スタッフの多い大学病院でされたい、と思うのではないかしら。 
 また、中には、唯「暴れるから」、と診断もろくに付かないうちに送られてくる患者もいて、先日などは、バイクの交通事故で左上下肢複雑骨折の躁状態の人、という触れ込みで送られてきた患者は実は脳挫傷であったし、その前にも、てんかんの患者の発作後不穏、という触れ込みの患者は実は心不全による失神であった、という例がありました。
 今迄にその大学病院から来た患者の中で一番の「ビックリ」患者は、緊張病性(統合失調症のサブタイプ)亜昏迷、と申し受けた患者が実は、首吊り自殺未遂後の意識障害であった例で、これは患者家族が自殺を隠そうとして、担当精神科医ウソをついていたのでしたが、それにしても、騙された医者はよっぽど間が抜けてますよね。こういう初歩的な診断ミスが起こるのは、やはり、大学の御医者様たちは、「精神障害者は自分の患者になりえない」、と偏見をもっているせいではないか、排除の論理があるのではないか、と思ってしまう訳で有ります。
 そして、この排除の論理は、多かれ少なかれ、何処の一般病院にもあるようで、だから、日本の精神科病院にはこれらの難しい患者たちが集まるのだろうけど、スタッフ数は一般病院>精神科病院、なんだよね。良いのかなあ…