措置入院の判断は科学的か(患者の自傷他害の予測は可能か)?

 措置入院とは、2人の精神保健指定医が2人とも、患者に自傷他害の危険が切迫していると認めた場合に強制入院させることが出来る制度であるが、医学的に“患者に自傷他害の危険が切迫している”と診断する根拠は実は薄弱なのである。

精神病患者の暴力リスク評価問診表とか、自殺リスク評価問診表とかが開発されてはいるが、感度も精度も悪くて未だに研究段階である。暴力や自殺に正常・異常があるのか、という議論にすらまともに答えられる医者はいないであろう。精神病者も含めた人間の本性は自由であり、前提条件から次の行動を予測することは殆ど不可能なのである。例えば、“自殺リスクは自殺企図の既往を持つ者に高い”というが、自殺既遂者の中では圧倒的に初発者が多いのである。幻聴に“殴れ”と命令される患者は暴力のハイリスクというが、命令するのが幻聴の宿命であり、実際精神病者は一般人口に比し多少とも暴力的であることは間違いないのであるが、これでは切迫性の評価にはならない。実際に精神科医がやってることは、本人や関係者からの話を聞いて、入院が最善かどうかを多数決で決めているようなことになる。ボクシングのジャッジの方が科学的かも知れないが、そんな下らない、と思わないでいただきたい。日本の一番の権力者である警察に対し中立の立場に立つのは、結構勇気がいるのである。
 そんな根拠のないことがどうして法律になっているのかを考えると、精神病と言われる人々は病人であるのだから、医者が対応出来るハズだ、という(根拠のない)信念が法律の前提にあることによるのではないか、と思い当たる。しかし、精神病が病気であるという根拠は、未だ見つかっていないのである(100年前の精神医学の誕生からずっと、もう少しで見つかるハズだ、と精神科医は皆言ってはいるが…)。僕は、先輩たちに騙されているのではないだろうか、精神医学は空中楼閣だったのではないだろうか、と思い直し始めてしまっているのであります。
 精神病者をそうでない人と区別するのは、非精神病者理性的に行動出来得るのに精神病者はそうとは限らない、ということが前提なんだろうけど、戦争してる人やツチ・フツしてる人(内戦やテロ)が理性的に行動してる人たちとは僕は思えない。世界中に暴力や自殺、貧困や戦争が蔓延している時に、加害者が精神病かどうかを区別する必然性がいったいどこにあるのだろうか?
 僕に分かる唯一の事は、武器商人は全くの、文句なしの、ピカピカの正常人ということだけである。