癌のメンタルサポート

 手術後の癌患者はうつ状態になることが多い。で、うつの治療を希望して精神科に回ってくる。担当した精神科医は色々努力はするが、結局上手く行かずに患者や家族をさらに絶望させることになる。僕は、癌患者の「うつ」と「癌」は別々に対応することは出来ない、と思う。手術後癌患者のうつ状態の原因はその患者のこころの問題というより、その患者の癌治療の経過や方法の問題や治療者との人間関係の問題、もっと言うと手術者の人格の問題が大きなウェイトを占めるのではないか、と思わされる事は少なくない。つまり、術後うつ病真実は、癌と手術がトラウマになってしまったPTSDなのだ。だから、精神科医が後から遠くから色々しても手遅れで、例えば手術した医師がその患者の為に術後も定期的に時間をとって相談に乗れる態勢を取るシステムにすればうつは予防出来るのではないか、と思うのだが、それはどうも非現実的のようである。
先日相談に来た患者は、近くの癌の拠点病院で手術をして2年目の人。その病院には精神科もあるのに、わざわざ当院へ。術後の主治医は地域の内科医へ変わっていて、その主治医は「うつは癌とは関係ない」と断言し、当院を紹介したとの事。本人は「手術した先生に会わせてくれ」とお願いしたが、「手術するのに忙しくて、術後の患者には対応出来ない」と言われた、と言う事であったらしいが、これは本末転倒だ。外科医の評価に、ぜひ、術後うつの発生率を入れて貰いたいものだ、と精神科医は主張するのであります。