たらい回しで精神科

 隣町のIさん軽度知的障害♂55歳。親が死んで一人で生活困難。町のあちこちで倒れて救急車であちこちの病院に運ばれるが、「異常なし」で帰される。いよいよ行ける病院はなくなって、救急車から「精神科の先生で良いから診て」と言われて引き受けた。診て見ると本当に歩けないし、それより何よりやせがひどく37kg。「このままじゃ死んじゃう」と本人の切実の訴えに同情し取り敢えず入院してもらった。で、精査したら、低栄養だけでなく頚椎症(首の骨が脊髄を圧迫して歩けなくなる)であることも判明した。しかし兄弟は手術に同意せず、しかも、歩けないんじゃ退院させられない、と主張し、どうも長期入院の気配である。で、今さらながら、入院させた自分の脇の甘さを痛感させられた。こんな有りふれた病気を各病院が見逃すわけはないのだ。つまり、彼を入院させると退院させられなくなるから、分かっていても「異常なし」で知らんぷりしていたのではないか、と、僕は勘ぐっているのである。