Hさんの事

 統合失調症Hさん(男、当時50歳)、の母は「私が生きてるうちは何とかなるにしても、私が死んだらこの子がどうなるか心配」が口癖で、機会がある毎に親戚にも近所の民生委員にも保健所にも警察にも相談に行っていた。数年前その母が死んだ。遺言(家・土地はHさんに)を廻って妹と関係がこじれ、その金に悪い友人達が纏わりついた。1年後、仕事に行かなくなって、引きこもって、その半年後ドロップアウト。その半年後に警察に「賽銭泥棒」で保護された。自宅は借金の抵当に取られていた。警察には精神科病院への入院をお願いしたが、そのまま多分不起訴で釈放された。久しぶりに来院した彼は痩せこけて汗臭く不潔な外見で、「幻聴が強く眠れないので薬が欲しいけど、金がない」と。取り敢えず薬を持ってって貰ったけど、その後やっぱりドロップアウト。で、今回(半年後)彼がコンビニで強盗まがいの事をして逮捕されたという。警察は「今回はちゃんとした病院に入って貰います」だって。Hさん本人から電話があって「母ちゃんと一緒に死んじゃえば良かった」と。僕は何にも言えませんでした。その後措置入院先の病院の主治医から転院相談を受けたけど、「自信がない」と断りました。悔しいけど、医者には親の代わりは出来ない。