男と男の話

 半年前に起こった、隣の病棟での話。発達障害で衝動コントロールが上手くゆかない24歳女性親子喧嘩で興奮し医療保護入院となったが、入院後は興奮せず問題ないとして1週間後に退院したはずの人がその地の駐在さん(制服来た警察官)に連れられて病棟まで入り込んできた。その数時間前に患者のから病棟看護師長に「家では面倒見れないから病院で引き取ってくれ」との電話が入り、先ず外来担当医と相談するよう答えた所であったという。その駐在さんは机に腰掛け、師長に「ここの親子を一緒にしておくといつか殺し合いになる。そんなことになったら誰が責任取るつもりだ。俺が話をつけに来たから医者を出せ」と言った。僕は廊下から見ていたんですが、担当医が「措置の通報は…」と言おうとしたら、「俺は法律がどうのこうのは言うつもりはない。警察官としてではなく、男と男の話をしたい」と言い出した。その後そこで患者、母、看護師、医者で、いろいろ議論となっていったんだけど、野次馬も集まってきて後の事は良く分からなかったんだけど(患者はその日に再入院し、今も入院中)、先週何かの集まりでその担当医に話が出来たので、「あの駐在さんは困ったね」と、てっきり怒っているんだろうと思って聞いて見たら、「なかなか良い議論が出来て、面白かった。議論じゃ負けた気はしないけど、人間としてはあっちが1枚上手かネ」と、案に相違した返事であった。「男と男の話」ってのは結果に関わらず、良いものなんでしょうかね。僕ら精神科医は誰かと対等に議論するってことが余りない(妻は別)からね。成程でした。