救急車で来る患者

 精神科の敷居が低くなったのか、経営者の何かの陰謀か、ここ数年救急車の患者が増えている。一番困るのは、街の挙動不審者で、本来なら警察→鑑定となるはずなのに、通報者が119番すると、「取り敢えず診るだけで良いから」と連れてきてしまう。大抵はただの浮浪者で、せいぜいが脱水か栄養失調で、金もないし住所もない。病院から改めて警察に事情を話しても、「それは福祉だ」と肩透かし。以前そんな患者で、しょうがないので入院させて、いろいろ調べてもらったら、数日前に刑務所から出たばかりの人であったことが判明してびっくりしたこともある(後で警察は「それはプライバシーだから言えなかった」と弁解していた)。
 先日来たのは「嘔吐、めまい」。救急車のスタッフが「これはフツーの嘔吐ではない」と判断したそうで、「取り敢えず・・・」と置いて帰ってしまった。診察後、「精神病ではないから」と言っても家族や本人は納得しない。検査に多少の異常値があったこともあり、「内科医に合わせろ」と言い出した。当院内科医は不在で、消防では「もうその人は救急の事態ではない」と取り合ってくれない。数箇所連絡した救急病院も、救急車がそういう判断なら、と断られた。家族は「診察してくれる病院はこっちで探し、介護タクシーで行く」と言うので好きにして貰ったが、結局探せられず、5時間後、介護タクシーで自宅に帰っていった。後で内科医に、そういう患者には、「一本点滴します、と生食200ml位注射すればその後は素直に帰るものだ」と言われました、救急対応にも処世術があるようです、反省。