「人を殺しちゃいそう」再び

 前回報告(14.3.12)は男であったが、今度は女性35歳。今迄新患患者に診察室で「人を殺しちゃいそう」と言われた事はこれで5度目(ウチ1人は実際、その3か月後に隣人を刺殺している)だ。周りに聞いても、新患では大抵ゼロだ。他に医者もいるだろうに、どうして僕の所に来るのだ!全くついてないと言うか憑いていると言うか。患者の素生が分かっていれば、対処の仕様もあるだろうが、前回同様今回も全く何だか分かんないウチに、数分で患者が逆上して病院を飛び出して行ってしまった。ホントに僕はデ・エスカレーションが下手糞だ。前回はそれで終わったが、今回はその患者が管轄の保健所に何やら通報したらしく、数日して僕は保健所から事情聴取されてしまった。担当官は口を濁していたが、その患者は僕に「診療拒否された」と主張したらしい。担当官は、診察時間を確認し、僕が「警察に行ったらどう?」と本当に言ったかどうかを、確認していった。どうも、精神科医としての資質を疑われているような雰囲気であった。しかし、警察云々は以前より考え抜いて編み出した技なのだ。本人が言うのを信ずれば「自傷他害の怖れが切迫している」訳だから、精神科医鑑定しなければならないだろうし、鑑定なら数分はマズイだろう、と考える人もいるかも知れない。でも、鑑定の手続きは、誰かが通報しなければ始められず、しかも精神科外来診察時の精神科医の通報は、ウチの県では受付ない事になっているのだ。だからこの場合、患者みずからが「一刻も早く」警察に出頭し、警察にその後の判断を任せるのが正解であろうと僕は信じているのですが、患者や担当官には通じなかったようです、残念。