理想の外来診察は2分

 僕の理想の外来診察時間は2分2分で何が分かるの、と思う人は多いでしょう。その通り、2分ではお互いの表面的な挨拶だけで、後は薬の確認くらいで終わってしまうのです。「どうですか?」→「いつもと同じです」→「じゃ、いつもの薬出しときます」となって、お終いです。患者は本当のことを言わないし、こっちも患者の本当の事など分からないけど、それで良いと思う。つまりこれは儀式であって、月に1回お互い顔を合わせる、というのがしきたりで、それが出来れば外来はOK、と思っています。実際に患者の具合が悪い場合でも患者は「悪い」とは言わない。精神病患者は病識がない、と言われる所以ではありますが、言えば薬が増えるかも知れないし、下手すりゃ入院になるってことくらいは患者も分かっているのでありますネ。
 「どうですか?」「いつもと同じです」―キツネとタヌキの騙し合いのような世界ではありますが、精神科はそんなもの、それでなくちゃと思います。所謂正常な人が、辛いこと、苦しい事、色々あってもグッとこらえて、「こんにちは、ごきげんいかが?」→「元気です、ありがとう」とやっているのと同じことと考えます。この儀式は世間で生きて行くのに必要な作法であり、つまり、患者もそうやって世間で暮らせています、ということを報告にやってくるのでありますね。患者さんには症状のために生きづらいことが色々あるんでしょうけど、それを医者にいちいち報告したってしょうがないんですね。誰かに頼っていたのでは精神病は治らないのでありますね。<自分の症状は自分で対処する>そういう患者・医者関係が僕の理想でありますね。  それじゃ精神科医はいらない、と言われちゃうかしらん?