医者の病識

精神科医が精神病になった時、自分に正しい診断が下せるか?実例が石田昇(長崎医専精神病学の初代教授)先生。アメリカ留学中に統合失調症を発症し、被害妄想で同僚を射殺し、責任無能力であちらの精神病院経由で松沢病院に送られた。秋元波留夫先生が「先生は自分を精神病と思っておられるのですか?」と聞いたところ、「他の人が言ったら妄想だろうが、自分が言うのだから本当のことだ」と答えたと言う(出典不明)。この「自分は正常だ」が精神科医をも含む人間の限界だと思う。人は皆、自分が一番だと思っている。僕も、自分以外の人には、何らかの精神病理学的特徴を診断出来る自信がある。生物は総じて自分を客観視できないようになっているのではないか、と思う。「飛んで火に入る夏の虫」が生物学的に正常なのだ。こころが主観的なものである以上、こころの正常/異常は全く主観的なのもであるしかない、というのが正しいような気もするが、そうなると、精神医学は科学として成り立たない事になってしまう。だから、医者に病識が有るかどうかは、試してはイケない領域になるのではないか…どうしてコンナ事考えたか、と言うと、先日、患者さんに「先生こそキチガイ」と言われたからで、そんな事言われるのは毎度の事なんだけど、なぜか今回はマジに「そうかも知れない」と思ってしまったからなのです。