同時多発自殺

 僕の患者さんで、今年の1月某日に過量服薬自殺が2例出た。Uさん45歳女とSさん43歳男。患者の自殺は覚悟しているが、同じ日に2例とは、僕の薮医加減も行きつくとこまで行った感じだ。Uさんはうつ病。過量服薬で他院から紹介があったのが5年前。I総合病院の薬剤師で、当時休職中。連れてきた夫が「僕が責任もって薬を管理する」と言い、I病院の産業医兼院長が「復職出来るまで無期限で待ってます」という話だったので、引き受けた。でも、復職・休職を繰り返し、去年ついに自分で辞めてしまい、同時に夫とは離婚しその後は引きこもりが続いていて、「何とか成りませんか」と付添の母に詰め寄られ、入院を勧めた矢先であった。Sさんは躁鬱病。院長からの流れで、4年前から僕の外来に来た。既に入院3回で、その都度転職。「院長の外来は混む。同じ薬を出せばよいから」と言うので気軽に引き受けたけど、その後も入院3回で、妻と離婚が2年前。2か月前に「久しぶりに仕事が見つかった」と喜んでいたけど、直前の外来で「人間関係で職場がキツイ」と弱音を吐いていた。両患者に共通なのが、自殺企図が今回で3回目、ということ。僕は「本気の自殺企図に4回目はない」と警戒はしていたけど、その通りになってしまった。でも、いつの間にか僕の心の中に住みついた悪魔(ブログ初登場)が「安楽死なんだよ」なんて嘯いてる。生き残った人は死んだ人の為に、何ができるのだろうか? 自殺の話は今回のこの話でお終いにする心算です。