患者さんの冬眠

 糖尿病と脳梗塞認知症+夜間せん妄で入院中のMさん58歳男性。寒波襲来の日の朝の事。何時までも起きて来ないので不審に思ったNsが起こしに行って異常に気がついた。起こしても起きないで、低血糖(29mg/dl)低体温(腋下で34℃)。当直Drが呼ばれて、点滴などしている内に意識は元通り回復したのだが、その後、このデータが医局で話題になった。内科Drは「当直ナースがネトボケていたんだろう」と疑っていたが、でも、彼の冷えていたのは複数人が確認しているのだ。確かに教科書的には有り得ない話だが、僕は「これはもしかして抗精神病薬のせいかも知れない」と密かに思っているのだ。彼が飲んでいた抗精神病薬はウィンタミンで、その名の通り、ウィンター+アミンで人工冬眠薬として開発されたものなのだ。今までの僕の経験でも、院内で、腋下や口腔内で34℃位はざらで、肛門内で30℃なんて人もいた。けど、低体温で死んだ人はいないけど、発見が早いからかも知れない。多分人間も寒冷地で適応する為に、リスやクマのように、冬眠する能力が潜在的にはあるのだろう。でも、老人に使う時には注意だね。