奇跡ののち・・・

 Hさん45歳男統合失調症。29歳時発症し、幻覚妄想が治療に抵抗性で、35歳時より会社に行けなくなった。2年休職後復職をはたしたが、その後2年も幻覚が続き、早退も多く、自室に引きこもることが多くなり、退職も時間の問題か、と、思われた39歳時のある朝に突然幻聴が止まった。幻聴が止まると他の妄想も自然消滅し、その後坑精神病薬を止めても再発はない。現在も不眠時にデパスを飲むくらいで休まず同じ会社に行けている。発症10年にして完全寛解したのである。ヤブの僕にとっては実に珍しい例で、産業医も「奇跡だ」と認めてくれてはいるが、実は目出度し目出度しには程遠いのであった。Hさんは寛解するに従って、性格が変わったようなのだ。本人は「人生のどん底を体験した後は怖いものなしだから、力が沸いてくる」と笑うが、母は、「大人しい素直な人」であったのが「自己中心のワガママな人」になってしまった、と戸惑いを隠せない。先日その産業医から相談があったが、職場では以前は虐められタイプであったのが、最近は虐めの加害者になる傾向があり、彼が引き起こす職場の問題は増える一方で、何とかならないか、ということであった。はて、どうしたものか・・・