4回目の放火

 医療観察法のカンファレンスを傍聴した。患者は2年前の4回目の放火後に逮捕された時、幻覚妄想状態で、責任能力なしと判断され入院治療となった70歳男性。病名は初めは急性アルコール中毒で、その後はうつ病統合失調症、と変わり、今回の鑑定では広範性発達障害+交通事故後遺症であった。最近退院許可がおり、本人希望の地域の老人ホームに住所が決まって、そこから週4日デイサービスに通い、週1回づつ看護師とケースワーカー訪問を受けるのだという。総勢12人のカンファのメンバーには県内の有名なスタッフが勢揃いしていた。今は症状は寛解しているので、要するにスタッフのする事は服薬指導だけなのであるが、マネージメント計画書が4枚もあり、患者はまるで記者会見をする俳優のような印象であった。患者が、「そんな事言う人にはもう会ってあげないよ」というと、言われたケースワーカーが「大変失礼しました。これからも末永いお付き合いをお願いします」などと、平身低頭していたのも気になった。これが今風の多職種会議なんだろうけど、どうも患者を甘やかしすぎちゃいないか、と不満に思った。精神科的に色んな診断が付くにしろ、要するに彼は以前はその日暮しの日雇い労働者であり、働けなくなってからはホームレスであったのだ。食い詰めてやけに成って放火を繰り帰す放火魔に対し、こんなに沢山の人的資源を投資するのは、無駄ではないか、と思ったのでありました。