引きこもりの10年後

 中学時代から引きこもっていて、その頃から時々診察していたけど、今迄は精神病の症状はなかった25歳男性が、最近、統合失調症の診断で入院した。入院後は誰が見ても幻覚妄想状態だ。家族に聞いても「今までは変な行動はなかった」と言うが、医局の皆は僕の診断能力を疑っている様子だし、家族も「定期的に診察は受けていたのに」と僕に不満の様子だ。でも、少なくとも1年前までは確かに「正常」だったのだ。でも、彼は初発の雰囲気ではないのは認めざるを得ないと思う。本人は「実は、幻聴は生まれる前からだ」と主張している! 彼の発症は一体何時なのだろうか? 
同様に中学時代からの引きこもっていて定期的に診察に来ていた27歳男性は、去年遂にアルバイトを始め、貯まったお金で最近車を買った。こっちの人は、途中で診察した同僚から「そのうち発病するヨ」と言われたことがあった人だ。これが自分の患者でなけりゃ、医師個人の診断能力、と言ってすませちゃう所だ。でも、引きこもりの10年までは、殆ど同じ経過であったことは間違いない(と思う)。こう言う事があると、ホントに自信が無くなりますね。