統合失調症者の長期予後は?

       
                                                                     この所、どの文献を見ても、この頃は統合失調症者の長期予後は良くなった、と記してあるが、根拠となるデータは皆外国のものであり、日本でのデータは見当たらない。僕の外来に平成1年に継続通院していた慢性(発病5年以上)統合失調症者の20年フォローのデータ(↑の図)では、再発は平均4.1回起きていて、その後入院した例が25%もあり、20年継続して経過良好と言える例は10%しかいなかった(ドロップアウト等53%も総数に含む)。そして、平成1年から15年の間に入院した慢性患者で(↓の図)、現在も入院中の例は16%もあり、退院し現在まで通院を継続維持出来ている例はたったの5%である(ドロップアウト等54%も総数に含む)。これで予後は良いとは絶対言えない。でも、統計を取るまでは、僕は8割がた治している気になっていたのだから、お気楽なものであった。具合の悪い患者は他の病院に移ってしまったり、自殺してしまったりするので、長い間には具合の良い患者ばかりが自分の周りに残っているのだ、と気がついた。

                         考えて見ると、暫く来ないな、と思っていた患者に久しぶりに会うと、何だか具合が悪そうに見えることが多いことに気づかされる。そして、医者の前でだけ体裁よく振る舞う患者も実に多い。
 「統合失調症は、なったらお終いの病気で、進行性に悪化する」、は偏見、ということになっていますが、こと、僕の患者に関しては、「その通り」、ということのようであります。
 で、結論は、「藪医者に注意」となるのなら、それで良いのだけど、名医と言われる人達の成績を見たいものである。癌患者の5年生存率のように、慢性統合失調症患者の5年外来継続率を発表していただきたい、と思うのであります。ぜひ!