整外Drの心意気

 通院中の40歳統合失調症男性患者が骨折して当院整外に入院した。手術後リハビリ中、退院出来ないうちに両親が遠くへ引っ越す事になり、彼は親について行くか一人でこの町に留まるか悩み始め、親族皆に被害関係的になって、ついでに整外の看護師さん達にも被害的・敵対的になることが多くなり、ついに婦長の堪忍袋の緒が切れて、精神科への転棟か退院かという所まで追い詰められた。で、彼は「絶対精神科へは移らない、退院して切腹する」と興奮し出し、僕や親の説得には耳を貸そうともしない。しょうがないので、医療保護入院で強制的に精神科へ移そうか、と相談し始めた所に整外のK Drが現れて、「この人は精神科的には問題ない人で、話せば分かるんだから」と、何と、整外病棟に残れるように婦長を説得し始めた。と、それを暫くジーっと見ていたその患者さんが、「K Drに迷惑掛けられないから、病棟移ります」と宣言したのでした。イヤ、御立派なK Drでありました。K Drは一般大学卒業し社会で数年働いた後医学部に入り直した、という経歴があり、普段から精神科の患者さんにも理解があることは分かっていたのですが、まあ、カッコいいシーンでありました。男が惚れました。