研修医残酷物語

 研修医は大変だ。臨床技術は覚えなくちゃだし、先輩や看護師さんたちとの人間関係も大切だし、自分のプライベートな生活も犠牲にはできない。ストレスフルな生活で不眠やウツになる人、さらには精神病症状の出る人もいて、そうなっても相談できる人もいない。我慢して自己治療して余計こじらす人もいる。昔の医局制度の時はそんな時は先輩がサポートし、また、同じ大学の精神科の医局がフォローしたものだ。今の制度でも研修先の指導医がサポートすることになっているのだが、例えばウチの指導医は院長であり、研修医との接触は薄い。最近ウチに来た研修医で、どうもぼんやりしていると思ったら、休む日も多くなって、研修にならない人がいた。本人は「体調がすぐれない」というだけで、同期の人達とも交流はなく、下宿で引きこもっているらしいと聞いた。たまたま病院外で会ったので、ナイショと言う条件で話を聞いたら、やはりウツで不眠で抗うつ剤を自己処方しているのだと言う。「自分でも医者は向いてないかも、と思うのだが、両親の手前もあり、取りあえず2年の研修は続けようと思っているので指導医には言わないでくれ」ということであった。つまりは研修医の登校拒否者であったが、研修は義務教育と同じで、落第、とは言えないらしい(留年はあり、らしい)。その人は6割の出勤で、何とか研修は終了したことになったらしいが、研修医は労働者であるとして、彼らのメンタルヘルスのサポートシステムはどうも中小企業レベル以下のようである。困ったものだ。