山中先生、おめでとうございます

 山中伸弥先生がノーベル賞を受賞されました。iPS細胞製造は実に偉大な業績で、正当に評価されての事と思います。僕も大学時代にマウスでの実験を手伝っていて、でも、半年経っても良いデータが出ず、毎日マウスをギロチンにするのに疲れていた所に良い就職口があったので、挫折して臨床医となったのですが、その頃同じ実験を手伝っていた仲間で、「臨床と基礎とどちらが患者を沢山救えるか」とか議論したことを思い出しました。あの頃は単純に医者は患者を救う使命がある、と信じていたものです。僕は臨床やってて、何人の患者を救えたのだろうか、と考えると、現在の、(他人の作った)マニュアルの指示通りにする治療、患者から訴えられないための治療でしかないと思われ、「やっぱり基礎でもう少し頑張った方が良かったのかなぁ」と今でも基礎やってる友人に言ったら、「山中先生ですら、まだ一人も患者を救っていない、と言ってるでしょう、普通の基礎やってる医師の焦燥感は臨床医には分からないだろうな」とため息を吐かれてしまいました。
 男は男に嫉妬するのが霊長類の特徴で、でも、僕は精神科医だから理性で嫉妬など抑えられる、と数年前までは信じていたのですが、この頃は高校や大学の同級生の肩書きが気になって仕方なく、他人の家の芝生は実に青い。TVの山中先生の爽やかな表情に、嫉妬しそうな自分がいる。僕が患者を救えるかどうかより、先ず僕は僕自身を何とかして何処からか救い挙げないといけない気がしている。