経過の良い患者さんの特徴(2)

経過の良い患者さんと良くない患者さんの違いの実例をあげると、中年の男性で、不眠と仕事の能率が上がらない、という、うつ状態の訴えの3人の例があります。3人とも、休日は息子のリトルリーグの手伝いを数年間続けていて、3人ともリトルリーグの手伝いは自分の生きがいであり、ストレスではない、と言っていました。診察の結果、治療方針として、3人ともに「仕事以外の時間は何もしない方が良い」と指導しました。
 Aさんは、「先生がそういうなら」、ときっぱり手を引いた所、そのかいあってか仕事は休まず続けられ、3か月後にはうつ状態寛解(治癒)しましたが、2年後にうつ状態再発し、今度は仕事以外に何もしないでいてもうつは回復せず、休職し退職となってしまいました。
 Bさんは「自分の好きなことは止められません」と手伝いを続けていたが、2か月後には出社拒否状態になってしまい、「良く考えたら手伝いにムリがあったことは分かったが、止められないので、今後は手を抜くようにします」と軌道修正し、その後も時々は仕事を休みながら、夜勤を減らしながら、徐々に回復して行き、3年後にはほぼ寛解しました。
 Cさんは自分がうつ状態であることも、リトルリーグの手伝いがストレスになっていることも認めず、睡眠薬だけ服用していましたが、仕事上のミスが重なり、上司に言われて休職した後退職してしまい、その後別の仕事に就くことは出来ましたが、休日が不定で、リトルリーグどころではなくなってしまいました。
 長期経過としては、Aさん<Cさん<Bさんで、医者の言うことを良く聞いた人が最悪であったのでした。自分で考えて、自分で行動した人が、自分の人生を上手く切り開いた、ということになりますかね。
 なんて、「人ごとみたいに評論してるお前の治療の力量の問題だろう!」と言われれば、その通りなんですけど、ね。ガックリ。