趣味の発掘

 75歳の精神科医らしいI Dr。老人ホームの非常勤を4つも兼ねている。彼の趣味は「隠れ精神障害者の発掘」。未治療のまま入所してくる精神障害者を見つけ薬物療法で症状の変化を確かめて、自分の「診断能力」を周りに見せつけるのだ。書き方で分かると思うけど、この趣味が実に迷惑なのだ。精神病の診断がつくとケアする事を拒否する施設もあるし、結局薬の副作用等で病院に転院となる患者も少なくない。また、患者の家族が発掘に不満で、又は治療に不審で、セカンドオピニオンを求めてきたりもする。当の患者本人も今迄でせっかく世に潜んで生きて来たのに、人生の終わり近くになって、「病気」だ「障害」だ「治療」だ、と、さぞ迷惑だろうに。。I Drは何を言われても馬耳東風の様だけど、趣味に付き合わされるこっちはいい迷惑なのだ。面と向かっては言えないけど・・

救急に不満あり

 数年前から、近所の複数の救命救急センターでは、脳卒中心筋梗塞の疑いの患者は即、24時間何時でも送ってくれて良い事になってる(文書で確認した)。だから、年末、僕の入院患者が失神転倒後半身不随になった時、CTの検査をする前に、搬送先の病院とQQ車の手配ケースワーカー要請した。トコロがその後の転院手続きが上手く行かず、結局QQ車が来たのは、24時間後、そして行き先は、救命救急センターではない別の病院だった。。。まあ日本の救急とはそのレベルなのだと自分に言い聞かせるしかなかった。  昔々(20年前)沖縄米軍病院に見学に行った時、戦争に勝つ国の医療は、さすが格が違うと思った。当時、心臓カテーテル検査の待機時間が24時間何時でも20分と言っていたが、当時の僕の大学の病院では、平日・日勤帯で数時間以内が精いっぱいだった。日赤出身のDrにボヤいたら、「今も昔も日本の救急は日露戦争レベルですよ。検査体制にしてからが、健康診断の為の検査の為に救急患者が待たされるんだから」と言われた。残念ね。

塩崎さん、自分の責任だよ!

 今日のニュース、「塩崎厚労相が高橋まつりさん自殺で電通社長辞任では済まない。企業文化を変えるべき」と言い放ったのにはビックリした。開いた口が塞がらないとはこの事だ。労働基準監督署が法律通りに会社を取り締まっていれば絶対こんな事態には至らなかった事は明らかなのに。本来なら、電通にモンク言う前に労働基準監督署が法律通りに動いていなかった事を反省し、塩崎さんが辞任すべき話だよ。。。。でも、実態はもっと深刻な話で、日本の企業は、自分の社員に違法な残業を強いらなければ利益が出なくなっていることなんだよね、多分。介護現場でのスタッフの重労働の現実を無視して患者虐待を非難する行政指導と同じ構造だね。まあ、政治家だから何か言わなくちゃ、と思って言って見ただけなのだろうけど、、腹が立つね。大体、塩崎さんは、厚労相就任以来、現場の人が意気消沈する事しか言わないのだよね。見て見ぬふりをしてたくせに何を今さら。。

タクシー無賃乗車の患者さん

年末ある日の朝10時頃、I(50歳女統合失調症)さんがタクシー無賃乗車で病院に受診した。本人がダメと分かると運転手はNsに助けを求めた。マニュアル通りに警察に通報し、一件落着と思いきや、警察官はヤジウマと一緒に遠巻きに見てるだけ。結局事務スタッフがIさん家族に連絡を取って、その運転手が引き揚げるまで2時間だった。Iさんは名物患者。ワガママで頑固で自己中。自分の思い通りになるまで、自分の言いたい事を一方的に大声で騒ぎ続けるのが得意技。お陰で僕の外来は散々だった。Iさん、営業妨害ですョ。警察官はIさんを、せめて院外に連れて行くべきだったと思うのですが、寒かったからかどうか、それとも時代が変わったせいかしら?昔なら警察が直ぐ連れてってくれたのに・・ぼやかない、ぼやかない。今年もFor The Patientで頑張ります。

クリスマスは祝えない

メリークリスマスは一番左の十字架。子供の頃からどうしてこんなのがイエス・キリストの誕生日のお祝いのシンボルなんだか良く分からなかった。私生児として馬小屋で密かに生まれたイエスは、宗教に目覚め、当時非主流派の宣教師となったが、主流派との争いに敗れ、35歳くらいで十字架刑で死刑となった。死の前に「わが神、わが神、どうしてわたしをお見捨てになったのですか」と言ったと聖書に書いてある(写真真ん中)。どうして殺された時の拷問具が誕生日のお祝いになるのか?色々解説を読むけど、今でも良く分からない。で、一番右側の写真。今もラッカではクリスチャンがイスラムの敵として磔の刑にされているようだけど、こちらは、「キリスト教など信じているとエスと同じようにして殺されちゃうよ」というメッセージなのだろうと良く分かる。磔の刑にされたスパイの誕生日は誰かに祝って貰えるのでありましょうか? さらにISISの神とイエスの神とは同じ神様だっていうんだから、宗教ってホント、何だか良く分かんない。

高橋まつりさんの母の手記

朝日新聞に、高橋まつりさんの母の手記が公開されていた。「母親なのにどうして助けられなかったのか」という気持ちは分かるにしても、自殺の全責任を電通に押し付けるように読めるのはいただけない多分お母さんは努力と根性の人で、その母の期待を一身に背負ったまつりさんは、その期待通りに東大に合格し電通に入社した。で、今回の自殺。自殺予防の観点から考えるに、最後の絆は母と上司と同僚が持っていたハズ。だからその絆の切れた責任は上司(会社)だけではないと思う。自殺念慮が自殺企図へと行動化するには、かなりの勇気が必要だと思う。行動したのはまつりさんだけど、彼女の背中を押したのは、会社の雰囲気もあるだろうけど、まつりさんの生育環境だってあるハズだ。ひ弱なエリートの挫折女手一つで育て上げたその気合が、自分の大事な娘を死に追いやった可能性は低くないと思うし、うんとフロシキを広げて言って見れば、一般に、この頃の日本の若者の自殺は、その直前の問題云々より、生育環境が問題なのだと僕には思われるのです。偏見ですが、やっぱ父親がいないとネ。

ある日の老人部屋

 入って右のJさん85歳は元校長。謹厳実直な方だったそうだが、呆けてからはファイター老人で、入院後1年たっても週に2回は介護者を蹴っ飛ばす。その奥のMさん88歳は元坊さん。アル中で住職首になりホームレスで放浪。特養に収容されたその日に2階から脱走を企てて墜落し左大腿骨骨折。人工骨頭入れた次の日にベットから転落し右大腿骨骨折。その後1年の拘束に耐えて解除されたけど、いつの間にか緘黙状態(唖)。天井向いてひとりで泣いたり笑ったり怒ったりしている。左はNさん80歳。大会社の元部長。寝たきりで寝返りも自分ではしないで、「座らせろ」と叫び、1分後に「寝かせろ」と叫ぶ。面会に来た奥さんの手を握って1時間離さなかったことがあった。その奥のTさん90歳は、こっちに背を向け、壁に向かって座って大声で何やら叫んでいる。。。マスコミは「人間の尊厳」(尊厳死、平穏死、満足死)って実に気軽に言うけれど、何か言う前に、先ずこの現実を見てからにしてもらいたい、と思う。苦しまず(周りを苦しませず)に死ねる人は限られた人ですよ。