暴力は減っている

 世界には、犯罪、テロ、戦争、内戦、紛争、レイプ、ジェノサイドなどの暴力事件が溢れている(様な気がする)。世界で毎年160万人以上の人が暴力被害で死んでいるらしい。アウシュビッツ収容所での犠牲者数が150万であることを考えるとこの数字がいかに凄いかが理解される。生物は総じて、「内部の者には親切に、外部の者は攻撃し、自分の遺伝子の繁殖の為なら何をしても良い」というルールに従って生きているのであり、人間もその例外ではない。生物の遺伝子がすでに利己的なのだ、というのが最新の理論であるようだ。しかし、ハーバード大学の心理学の教授のスティーブンピンカー氏によれば、統計的データによれば、人間の暴力による死亡率は、古代から中世、近世になって行くにつれ、ヨーロッパだけでなく世界中で、減り続けているらしい。それは9.11以後もそうなのだ、と2014年に追加発表があった(←グラフ参照:赤棒は初出時)。彼によると狩猟時代の人類は2割位の暴力死亡率であったのが、農業革命で1/5になり、そして近世の啓蒙主義の文明の広がるなかで、1/10-50になったのだ。人々はいつも統計データでなく、記憶に残った特定例をもとに判断するので、「世界の暴力が増えている」と錯覚するらしい。例えば教科書が最近の紛争を頻回に取り上げるなど、歴史的な近視眼に陥っているし、また、大量破壊兵器が広まって、1回の暴力での殺傷力が増大し、また規模が増大し、1回の暴力の被害がけた外れに大きくなっているから錯覚するのであろうという。ちなみに、歴史上の暴力死亡率のダントツNo1の事件は8世紀の中国の安録山・史明の乱で、当時の中国人の2/3がこの乱で死んだらしい。No2は13世紀のジンギスカンの世界制覇、No3は中東の奴隷貿易関連死、と続いて、第2次世界大戦は9位。そして、暴力死だけでなく、暴力犯罪も、レイプも、虐待も、統計的には減っているのだと彼は断言している。つまり、現代は歴史時代よりましな時代なのらしいのだけど、それは、彼によれば人類の進化であるらしい。本当なのかしらん?