妹が患者に金を借りに来た

  長期入院中のKさん(65歳♂、統合失調症)は親が死んで3年目。遺産の問題で対立した妹が8年ぶりに面会に来た。事情を知るKさんの従兄によると、親の気持ちは「Kには親の死後にせめて金だけでも残してやりたい」だったが、妹は「Kは親に迷惑ばかり掛けたのだから遺産を貰う資格がない」と言い張り、結局Kがかなり譲る形で遺産の分配がされたらしい。従兄はその妹の真意を疑っていたが、案の定3回目の面会の時に妹からKさんに借金の申し込みがあった。従兄は反対したが、本人は「俺は長男だから妹の面倒はみてやらないと」と言いだした。Kさんは確かに後見人は必要ないにしても長期入院で金銭感覚も鈍っているだろうし、今後の彼の生活費だって年金だけじゃ成り立たないので、当院のケースワーカーと従兄立ち会いの上で契約する事になった。妹が「200万。月に1万づつ返す」と切り出した。Kさんの全財産だ。でも本人は「いいよ」と即答。あわてたケースワーカーが「それじゃこれからのおやつも食べれないョ」と言ったがKさんは「俺の金だ。俺が自由に使う」と譲らない。結局ケースワーカーが残せたのは30万と「毎月面会」の約束だけだったが、Kさんは「兄のメンツが立った」と誇らしげであった。で、その後は予想通り面会も返金もないが、Kさんは「その内くるさ」と気にする様子はない。「Kさんは人が良い」、と誉めても良いのだろうけど、「これが精神障害なのか」、と諦めるしかないのだろうか?