後期高齢者のうつ病入院の末路

この頃、80過ぎてうつ病疑いで紹介されてくる。「元気がない」、「食事が細くなった」、「寝てばかりいる」、と、かかりつけ医やケアマネさん達から診察を求められる。昔は、老年でのうつは治らない、が常識で、大抵は脳梗塞後遺症か何かで、衰弱→寝たきり→死となる自然経過のボケの随伴症状として治療の対象にはならなかったものだ。死ぬ前にはボケるのは当たり前で、ことさら治療は必要とされてなかったと思う。でも、この頃の開業医は違うのだ。抗うつ剤などをを出して治療を始めてしまうのだ。で、うまく行かないと、「介護に手間が掛るようになったのはうつ病のせいなんだから」と入院治療をしろ、と責めてくる。せっかく10年、20年在宅で頑張ったんだから、どうせ後少しなんだからもうちょっと頑張ったら、と思うんだけど、押されて入院となり、入院するといろいろ病気が見つかったり、糖尿病や動脈硬化の治療が大変だったりで墓穴を掘る事になる。入院したって少し良い気がするのは最初だけで、やっぱりじり貧で、結局数年かけて、寝たきり→死亡となってしまうのは変わらない。当院は老人を入院させるのは認知の専門家で、入院後数カ月で僕ら普通の精神科医が担当するシステムだから、つい被害妄想的になってしまうのかもしれない。確かに中には抗うつ剤ですっきりする80歳も経験するから、一概にムダとは言えないけど、中には介護拒否の確信犯的家族もいたりするからイヤになる。人生最後のうつは治療せず見守るのが良いと僕は思うのだけど、ほっといて自殺されても困るしねェ。