「手足が勝手に動く」病

 今、診断に困っている。パーキンソン病認知症で入院した患者66歳♂。街中徘徊しそこらじゅうで転倒する。面倒見ていた神経内科の先生がついにギブアップし、当院に入院となった患者さん。彼の言い分は、「足が勝手に動く」というもの。初めは誰も信用しなかったが、どうも本当らしい。初めは数分だったが、その後勝手に動く時間が長くなり、今では1時間以上続く。ベットに拘束しても歩くような動きで「止めようと思っても止まらない」と言う。大学の先生は「詐病」の判断で、院長は「ヒステリー」。診断は何にせよアブナイので車椅子の時はベルトで固定しているが、この前診察中に彼の両手がしきりに動いて、どうもそのベルトを外したいらしい雰囲気。本人は「手が勝手に動くだけ」と言うのだが、そこで、試しに少し手伝ったら上手にベルトを解いて、そのまま歩きだす態勢になったので、あわててまたベルトを着けた。彼は、「僕は、歩くのは危険だ、と頭では分かっているのに僕の手足が勝手に動くのを止められないのだ」と悲しそうに呟いたのでありました。不肖の手足を嘆く脳ミソ、これは悲劇だ!!