認知症の早期発見キャンペーンはムリ筋

 WHOや厚生労働省がする「○○の一つ覚え」のうちの一つが、病気の早期発見だ。昔、伝染病で上手く行ったことは認めるが、こと精神科では今までは全滅だった(精神遅滞ADHD自閉症、登校拒否、うつ病PTSD統合失調症等)。現場は誤診や誤治療で混乱し、実験材料になった患者さん達には苦痛、絶望が残っただけだった。最近もまた自殺予防の為に不眠を強調し「うつを疑ったら精神科へ」と始めたら、キャンペーン元の富士市で自殺が増えてしまって収拾が着かなくなっている。それに懲りずに今度は認知症早期発見早期治療キャンペーンを始めた。お陰で当院の認知症外来はオオハヤリであるが、担当する先生達は頭を抱えている。早期診断は専門家でも難しく、軽度の認知障害(MCI)があった場合でも、その後必ずしも障害が進行しない場合も多いのだと言う。さらに、本人家族は早期に治療することで、認知症でも自宅で生活し続けられる事を期待するのであるが、生活レベル(QOL)と認知症レベルとは殆ど関連がない。で、結果として早期発見は早期入院に繋がっていくことになるらしい。「早期発見で地域で安心」は無理筋であろうとは誰もが考えるのであるが、どうしてこんな事が起こるのかは、多分これも薬屋のインボー説が有力な仮説でありますね。さらに、当院の専門家達は本音では全員「認知症は単身生活は無理」と考えていますね。