認知症老人の精神病院入院基準

 「精神科病院に入院が必要な認知症の人の状態像に関する調査研究事業」がようやくまとまった。それによると、「認知症に随伴する興奮や幻覚や妄想が重度になったとき、治療の必要な間だけの入院が適当である」という。そして、「適切に退院させれば、現在以上の精神科ベットは必要ない」らしい。
 こんな議論を「机上の空論」と言う。実際は、精神科病院は、症状の有無に係わらず、地域・家族ではケア困難になっている老人、地域・家族の迷惑になっている老人、の最後の受け皿となっているのだ。その為には本来は特別養護老人ホーム(特老)があるのだが、施設は数が限られているし、緊急の利用が出来ない。特老並みのケアの可能な施設は民間にもあるが、月額30万以上は覚悟しないとならない。
精神科病院の老人のケアレベルは高い。昔の精神病院の看護レベルを想定して「安かろう、悪かろう」のケアを想定する人が多く、「精神病院では老人が可哀そう」という意見は未だに少なくないが、現在の精神科病院は、一般科で看きれない老人をケアすることが出来る(特老よりもレベルは高い)し、経費も安い(月10万あれば何とかなるらしい)。安いし質が良い、となれば患者さんが増えるのは当然でしょう(その分スタッフはシンドイけど)。
地域ではケアしきれない老人がいる」という事実と、「老人のケアも金次第」という事実に厚生省は目を反らせたままだ。「家族ケアに正当な対価を」という議論も10年前に凍結されたままだ。大体今さらこんな研究しても、遅すぎる。