や・ら・れ・た!?

 近所の開業医S先生から紹介された75歳男性。高血圧と糖尿うつ病の既往があり、うつ病の再発で数年前に当院に入院した事もあるらしいが、その後はS先生がフォローしていた。家族は「両下肢に痛みを訴えはじめたら、精神科受診を指示された」と言ったていた。紹介状には「うつ病が再発したらしい、認知かも知れない」とのことであった。うつではなかったが、認知の精査をするつもりでとりあえず引き受けた。3日後に意識障害で救急搬送依頼で、「S先生には身体的には異常ないから精神科へ行け、と言われた」と。取り敢えず入院して貰ったらさあ大変。その脳梗塞を繰り返すは両足は壊死になるはで、「典型的な動脈硬化の末期の状態」で、当院の身体科の諸先生に大変お世話になった。S先生はずっと、「動脈硬化は軽度で安定している」と説明していたらしく、それが「救急車で精神科に入院させられて、入院した途端に重度の動脈硬化になって、両足指は切断されて、歩行困難で寝たきり」になってしまったのだ。結果的には精神科的に出来る事は何もなかった。「どうして精神科なんですか」と本人にも家族にもシツコク聞かれるのだが、僕に答えはない。S先生は、「老人がうつ病認知症になると、時にこういったことが起こる」と家族に説明しているらしい。S先生は地域で評判の名医である。「それだけ老人の精神疾患診断は難しい」と納得すべきなのか、「開業医はずるがしこい」と恨むべきなのか…。