高齢者・障害者虐待の現状

 高齢者虐待防止法が施行されて7年。障害者虐待防止法は半年。医師は「虐待を見つけたら通報」しなくちゃならないことになっている。去年末の或る寒い日、僕の外来に通院中の精神障害者75歳女性が救急車で某公立病院に運ばれた。同居のアル中の息子とケンカして家を追い出され、次の日薄着で路上に倒れているのを発見され、低体温症であったという。殴られた痕も明らかであったので、担当医は市に連絡した。その時は、「シェルターのような所に移す」という話であったようだが、結局「長女の所に同居することになって、息子は断酒の指導を受けることになった」はずであったが、退院1か月後の通院時には自宅に戻っていて、2か月後には顔に青タン作って来院した。取り敢えず担当者には連絡したけど、「私にはどうしようもありません」との答えにビックリ。僕はこの2年でこの例含めて3件程虐待に関与したけど、3例とも曖昧ウヤムヤの結末だった。日本が法治国家ではないこと位は知ってるつもりだったが、虐待防止法程役に立ってない法律も少ないんじゃないかしら。本気でやるなら、公立のシェルター作って、警察常駐させて、という位でないとダメと思うけど、日本じゃ先ず不可能ですねエ。アメリカでは通報しないと罰則があり、通報されたら必ず警察が対応する、という事になっている様ですヨ。やはり今後も、「家庭内問題不介入」「民事不介入」の原則で診療するしかないのでしょうね、残念。