認知症患者の殺人未遂

 認知症のIさん75歳。10年前に自営のスーパーを長女夫婦に譲り、隠居の生活の場にこの地を選んだ。この地域では最大の病床の公立病院の神経内科のA先生が主治医。Iさんの妻も認知症で彼女はこの地域で最多の救急受け入れ者数の私立病院系列の老健施設に入所中で、主治医のB先生は元某大学循環器科教授。Iさんの娘(次女)は万引き常習者で刑務所から去年出てきてIさんと同居していた。彼女の主治医は県立精神病院のC先生。ある日、Iさんは娘と口論の後、大工道具で娘に傷害を負わせで殺人未遂容疑で逮捕された。県立病院に鑑定入院したが、「治療の効果が見込めない」と医療観察法の適応にならず、検察は従来の措置鑑定に回し、当院院長が当院に措置入院させたが、今月措置解除と共に僕の病棟にやってきた。Iさん夫婦の事件時の状況を知れば知るほど、認知症に対し、また、暴力に対し、如何に医学が無力であるかが、痛感された。Iさんの様なケースこそ大学や県立病院で引き受けて、有効な治療を検討すべきなのではないだろうか。ABC先生は皆この地域の認知症医療のエキスパートであり、「認知症患者の暴力の予防」とかのテーマで講演もされているのだ。臭いものに蓋をして「安心」を言い立てる彼らのやり方は、東電の原子力安全神話と同じやり方だ。でも、僕にも代案がある訳ではないのが、辛い