強制的なECT

　 躁鬱病の躁状態で入院（医療保護）してもらった患者50歳男にECT（有痙攣の電気痙攣療法）をした。以前も同様の症状で入院してもらった時に薬の効果が不十分でECTをしたら著効したので、今回は入院直後にECTをしようと思ったら、何故か本人が非常にイヤがって、保護者（弟）も「入院させといてくれればそれで良い」とECTには消極的。しょうがないので薬で様子見ていたら、滅裂・錯乱状態になってしまい、保護室へ隔離しても興奮が収まらなくなってしまった。このままでは命の保証も出来ない、と、弟を説得しても弟は「食事介助はナースの仕事」と冷たい態度。意を決して弟の承諾なしでECTを施行してしまった。1回で意識はかなりはっきりして、その後は本人も承知してくれて、「入院後すぐして貰えば良かった」と反省するようになって、経過良好で目出度しなんだけど、強制入院した時点で強制治療も承知して貰った積りでいた僕には、この弟の態度がどうも気に食わない。本人の具合が良くなっても喜ぶ風もないし…、以前の保護者（父親）は「本人の具合が良くなるのなら、方法は先生にお任せします」だったのに…そうは言っても、医者が好き勝手に治療手段を選ぶのもおかしいとすれば、やはり保護者に承知してもらうしか道はないのかしら…100％良い結果が出るハズもないし…本人が具合の良い時に未来の治療の承諾を貰っておく（アドバンス・ディレクティブ）手もあるらしいけど…。「ECTは虐待だ」という意見は承知しているが、有効性も高いのも確かなのだ。まあ今回はこれで良しとして、、、For the patientしかないよね。