時事問題へのリカ教授の精神医学的コメント

 香山リカ教授が積極的にマスコミで発言している。その発言の何処までが精神医学的に正当なのか、と聞かれることは多いのですが、僕は、精神医学の時事問題への応用は個人の感想程度に思っておいて下さい、と言うことにはしていますが、彼女の意見は精神科的にはけっこう正論だと、個人的には思っています。精神科医は、「人間は皆精神的に何処かおかしいもの。完璧に近い人間がいるとすればそれは精神科医だ」という特有の職業病的妄想をもっているもので、その「上から目線」は患者や学生相手なら許して貰えるのですが、一般的にはそれが腹立たしいと思う人が多いようですね。特に、意見を聞く相手が精神医学的な判断を必要と思っていない時は、精神医学は全くと言ってよい程通用しないもので、某氏が、「リカ先生は僕に会ったこともないのに、どうして僕が病気だと判断出来るのか」と反発したのは、一般的には当然の結末なんだろうけど、でも、某氏の普段の言動は精神科医には「異常だ」と言われそうな内容であることも確かであると思われるのです。精神科的な正常/異常の判断は、19世紀的なものなので、現代の時事問題には役に立たないのは残念な事でありますが、リカ教授もそんなこと百も承知で、それでも意見を言うのは多分彼女の「正義感」なのでしょうが、その「正義感」はストレートに世間の人々には伝わらないようです。でも僕ら精神科医は、「正義は我にあり」と信じないとやってられない事が多いので、つい、余計な意見を言ってしまって、後で後悔するのです。でも「俺は正常だ」と居直るやつはかなり怪しいのでありますね。がんばれ、リカ教授。