患者さんの食事制限

 精神病の患者さん達の身体的ケアの必要性が言われるようになり、当院でも数年前から、入院患者さん達への食事指導を今までより厳しく行うようになっているのであるが、食事制限を強制的に行って良いものか、僕は悩んでいる。昔は長期入院中の患者さん達には大食漢が多く、腹いっぱい食べるのが唯一の楽しみである人も多かった。そんな人達に食事制限をし始めた時には、他人の食事やオヤツを虎視眈々と狙う人が増えて、食事時には殺伐とした雰囲気になった。げっそり痩せて目を爛々と光らせてお菓子をねだる患者を見て、面会に来た家族も「この病院は食事もろくにあげてないのですか」と言ったものだ。半年位するうちに大抵の患者は慣れてきたようだったけど、それでも以前のような食事時の笑顔は見せてくれない。僕には痩せてる患者は貧相に見えてしまう。しかし最近、院長が「これからは脱メタボが病院の義務」と言ったらしく、栄養士さん達はコレステロール基準値をもう一段下げて(220mg/dlから200mg/dl)指導しようとしているらしいのである。「外来患者と違って、指導がデータに直結するから遣り甲斐がある」というのだが、それは現場で有無を言わさず我慢させているからであって、これを食事指導とは言わないのではないか(虐待ではないか)、と僕は思うのですね。