満腹死?

 62歳の長期入院中の統合失調症の患者さんのことである。2年前に母親が亡くなって、その後暫く外泊が出来ないでいた人が、久しぶりに外泊に行った。1泊であったが、連れてった兄弟がびっくりする程朝から寝るまで食べまくり、次の日も病院に帰るまで色々食べていたという。帰ってきてお腹が膨らんでいるのにビックリしたスタッフが体重測ったら何と、8kgのオーバーであった。患者は満足そうに「思い残すことがない程食べて来た」と言っていたと言うが、その他に特に心配になることもなく就床した。で、次の日に起きて来ないので病室に見に行ったらすでに心肺停止状態であったので大騒ぎになって、警察呼んで検死もし、全身CTも撮ったのですが、死因不明。呼ばれた家族は「昔から食いしん坊だったから本望だったろう」と解剖には消極的で、検死官は「満腹死など聞いた事もない」と不審がっていましたが、結局解剖はしないで、心源性の突然死という検案書になったようでした。患者の死に顔は何だか笑っていて楽しい夢でも見てるような表情で、僕は(不謹慎ではありますが)、「良い死に方だったかな」と思ってしまいました。どうせ死ぬなら満腹死がいいなぁ。