精神科医は避難所には行かない

今度の地震は激しい揺れで、僕の病院では、スタッフ総出で患者を皆1階に下ろして待機として大変でした。院長の決断でしたが、結果は事故もなく良かったでした。現在は停電で大変です。
地震がきっかけで入院中の精神病患者で情緒不安定になった人は、思ったほど多くなかったけど、数人が躁状態となりました。教科書にも書いてあるけど、災害後をきっかけに躁状態になる人がいるんですよね。一人は「天罰だ」と何処かの知事と同じ事を口走っていました。
 さて、本題。マスコミでは「こころのケアの専門家を避難所に行かせるべき」との論調が見られますが、精神科医が行ってもしょうがない、というのが僕の意見です。例えば、避難所で躁状態の人がいたとして、精神科医に何が出来るのでしょうか? これは警察の人に保護してもらうしかないでしょう。また、例えばうつ状態の人がいたとして、辛かった体験を喋ってもらった所でうつは治らない。精神分析的治療はストレス障害には逆効果で、むしろ、感情を押し殺してガマンした方が予後が良い、という報告もあるくらいなのです。下手な同情では被災者の気持ちを逆なですることも多いであろうし、、、。では、どうすべきか?世の中にはどうしようもないこともあり、地震被害はそのどうしようもないことの一つ、と割り切った方がよいのではないか、と思うのであります。「こころのケア」をいう前に、先ず、物質的な援助をもっと十分にしてあげましょうよ、と思うのであります。20日のニュースで、子供のこころのケアに保育士が派遣されるようですが、まあ精神科医が行くよりは良いですかネ。もし、僕が応援に行ったら、自分が躁状態となって送り返されるのが関の山だろう、と予想します。躁も移るんデス。