僕は平成の清明になりたかった

 僕が研修医の頃は、21世紀には精神病は治る・治せる病気になっている(ハズ)と、当時の精神科教授も助教授も言っていたし、当時のカリスマ先生方も口をそろえてそう言っていた。「こんな悲惨な病気が治るのか」と信じて、それなら、と思って何かオマジナイを教えてもらうような気持ちになって精神科医になったのであります。で、30年たって、21世紀も10年過ぎて、でも、精神病はちっとも治る病気にはなっていない精神分裂病という名前が統合失調症になったくらいだ)。この前、昔そう言ってた人に会ったときに、「ちっとも治る病気じゃなかったじゃないですか!」と文句言ったら、「そのくらいの気合でガンバレ、ということだったのですよ」と、あっさり言い返された。どうも、僕は騙されて、精神科の医局に入ってしまったようなのでありました。夢に賭けた人生、と言えばカッコいいけど、騙されていた単純男、とも言えるようです。反省するに、僕は楽して安易に、というか、美味しいとこ取りの人生を目指していたようで、甘い言葉に釣られて精神科医になったようにも思います。誰かが精神病を治す妙薬を発明するのを只管待っていたのでした。そして、次々に出る新薬にその期待を託したのででした。しかし、現実は厳しかった…。僕の仮説(本音の本音は結論)は、「精神病は病気じゃないから、治しようがない」というものです。精神薄弱しかり、自閉症しかり、学習障害しかり…。ヒステリーとか、同性愛とか、昔は病気と言われてましたが、今は病気とはされてないように、精神病も病気じゃない、ということになるんじゃなかろうか、と予言しておきます。当事者達に本当に必要なのは<人生相談の専門家>でありますが、僕のような単純男ではダメのようです。僕は、平成の清明陰陽師の安倍清明)になりたかったんだよおうおう…
*医者がいかに嘘を吐くかは、ロバート・メンデルソン、医者が患者をだますとき、がお勧めです。また、精神科に限っては、渡辺哲夫、20世紀精神病理学史がお勧め。