自殺予防は不可能

自殺は予防出来る、という自称専門家達がマスコミに出没している。政治の世界でも自殺予防は国の仕事、ということになっている。それなのに、平成22年も日本の自殺者は3万人を超えている。どうしてか? 僕は、自殺できるのが人間だ、と思う。どうしようもない事なのだ。
今日も外来に自殺企図者が来た、それも2名。初めの人は、入水自殺しようと思って川に入ったけど、アンマリ冷たいから、3時間浸かって帰って来たという。家族は「そのままいっそ死んでくれれば良いんだ」と僕に悪態を吐く。僕は「じゃ、連れてくるなよ、もう一回その川に連れてきゃいいじゃないの」と言いたかったけど、腹にしまって、「帰って来たんだから誉めてあげてよ」と言うのが精いっぱいでした。
2人目は、「仕事が辛くて、休むのは余計心苦しくて、ビルの屋上から飛び降りようと思ったけど、死体が無残と思い直して3階から飛び降りたら2階の鉢植えに引っかかってしまいました残念」と。で、自分で救急車呼んで、骨折の処置はしてもらって、「後は精神科へ行ってください」と言われたそうで、次の日にびっこ引いてやってきた。救急で本当に助けるつもりならその時点で通報でしょうに! で、「僕にどうして欲しいのですか」と聞いたら、「会社休む診断書が欲しい」と、のたまわったでありました! 飛び降りは3回目だと言う。
いつもの事だけど、まるで精神科がその人の自殺企図の責任を取らなきゃいけないような雰囲気で連れてくる。自殺企図は病気じゃない!その人が自殺するのは、少なくとも僕のせいじゃない、と、言いたい。言わせてもらいたい。でも、言わせては貰えない。ナンデダ!!
遠い遠い所から、頼みもしないのに、僕の外来を目掛けて、皆、眼の色変えて自殺企図者を連れてくる。僕にどうしろと言うのだ? 僕は何時から神様になったのだ?
自殺予防基本法なるものも出来てしまって、人間は、自殺しちゃいけないんだそうだけど、それでも法律に違反して自殺企図した人は、どう罰するのでしょうかね?最高裁判所の所長に聞いてみたいものだ。皆バカヤローだ!こんなのばっかり診ていたら、僕だって死にたくなっちゃうじゃないか!