隔離拘束は必要悪

精神科病院では、精神病患者さんの暴力自殺の予防、または認知症老人の転倒防止などの事故防止のために、やむを得ず患者さんを隔離(牢屋みたいな個室に閉じ込める)したり拘束(ヒモでベットに縛りつける)したりするのですが、これが世間では評判が悪い。患者さんの人権を尊重していない、虐待だ、というのである。虐待だ、と文句を言う人は、大抵患者にとって第3者的な評論家的立場の人で、患者の介護者たちは隔離や拘束の必要性を良く分かってくれるのである。精神病の人は、暴力的である。これは科学的事実である(患者がおとなしい、というのは昔の神話ではあったが…)。症状が強くなると、患者の気持ちとしては、正当防衛的に暴力的となるが、その暴力の被害をこうむるのは、治療者側のスタッフである。介護や看護をしようとして近づく人間を、敵の一味と認識して、攻撃する気持ちは良く分かる。良く分かるが、やられる方の身にもなってもらいたい。ちなみに僕は、今迄の25年の診療歴で、5回殴られたことがあって今でもトラウマになって心に残っています。患者がスタッフを殴っても、誰も助けてくれない。警察は「殴られるのは仕事のうち」と澄ましているだけ。裁判では「心神喪失、責任無能力」。本当は拳銃だって欲しい位だ、というのは言い過ぎにしても、何らかの患者の暴力への対応策は不可欠と考えます。
 患者の権利と言うけれど、それじゃ治療を諦めてもらうしかないのじゃないのでしょうか?隔離拘束のない病院、という売りの病院や施設がありますが、そういう所は患者を選んでいるんですよね。この前も某病院から、「拘束して点滴したいんだけど、ウチじゃ出来ないから」と転院の相談がありました。これは治療拒否になるんじゃないのかなあ。
 スタッフの自衛手段としての隔離拘束は、治療者側の正当防衛に当たると信じています。
※今回は法律的な話は一切省きましたが、法律的な問題も多いんですよね。